Accessでデッドロック?レコードレベルロックと注意点を押さえる

以下では、「Accessでデッドロック?レコードレベルロックと注意点を押さえる」をテーマに、Accessをマルチユーザー運用する際に生じ得るロック問題(デッドロックや競合)について解説します。Accessはシンプルに使える反面、複数人で同時にレコードを編集しているとロック競合が起こりやすく、場合によっては実質的なデッドロックに似た状況が発生します。フォームのロック設定やテーブルのサイズ・ページ単位ロックの仕組みを理解し、トラブルを未然に防ぎましょう。
1. デッドロックとは?Accessでもあり得る?
デッドロックは、データベースで2つ以上のトランザクションが互いに相手のロックを待ち続け、永久に進まない状態を指します。SQL Serverなど大規模DBでよく話題になりますが、Access(ACE/Jetエンジン)でも競合・衝突が激しい状況では、事実上の“行き詰まり”が起こることがあります。
- ただしAccessでは厳密なトランザクション管理やデッドロック検出がSQL Serverほど高機能ではないため、実際には競合(Write Conflict) ダイアログが出て「保存/コピー/破棄」を迫られたり、ファイルロックが掛かったまま進まない状況が起こることも
- 複数ユーザーが同じレコードを同時に更新したり、ネットワーク遅延でロックが長時間保持されると、Accessの内部ロック制御がトラブルを起こす原因になりやすい
2. レコードレベルロックとページレベルロックの概要
2.1 Accessのロック機構
Access(ACE/Jet)の内部ロックはページ単位と呼ばれ、デフォルトでは2KB/4KBのデータ単位でロックする仕組みです。
- しかし、フォームのプロパティ設定やAccessのバージョン・状況によっては「編集中のレコードのみロック」「ページロック」などを切り替えられる
2.2 レコードレベルロック(Edited Record)
- フォームのプロパティ 「レコード ロック」 を「編集レコードのみロック」にする
- ユーザーがあるレコードを編集モードにすると、その1レコードだけが他ユーザーから書き込み不可状態に
- 読み取りはできても、上書きはできない → 保存確定まで待たされる
メリット
- 競合が発生しにくく、同じページにある他のレコードが巻き添えでロックされる現象を抑えられる
デメリット
- 運用やアプリケーション設定によってはロックが長時間保持されると、他ユーザーが同じレコードを編集できず効率が落ちる
3. フォームでのロック設定:編集レコードのみ/全レコード/なし
フォームのプロパティにある「レコードロック」(RecordLocks)で3パターン指定できます。
- なし (No Locks)
- デフォルト設定。複数ユーザーが同じレコードを同時に編集できるが、上書き競合が起きたときに「他のユーザーが更新済み、あなたの変更は上書きしますか?」などのダイアログが出る
- 一見自由だが、Write Conflictが頻発する場合は混乱しやすい
- 編集レコードのみ (Edited Record)
- 編集中のレコードだけロックされ、他ユーザーは書き込み不可になる(閲覧は可)
- 競合の発生を抑えやすい
- 全レコード (All Records)
- フォームが開いている間、表示中のレコードすべてがロックされる → 同じテーブルを他ユーザーが編集できない
- 共同作業をほぼ許さない過激設定で、通常あまり使われない
現場では「編集レコードのみ」を選択し、ユーザーが少なめでそこまで大きくないテーブルなら競合を最小にできるケースが多いです。
4. 競合や擬似デッドロックを回避する運用例
- フロントエンド分割
- テーブルをバックエンドファイルにし、各ユーザーが自PCのフロントエンドからリンクテーブルでアクセス。衝突を少しでも軽減
- 短いエディット
- 大事なフォームで編集モードに入ったまま他作業をしない
- 編集が終わったら保存(Enter or 移動)してロックを解除する
- 連続フォームの仕組み
- 連続フォームだと複数レコードを一度に表示して編集しがち → 競合率が高くなる場合あり
- 重要データは単票フォームで編集し、1レコードだけロックする運用
- データの分割設計
- 頻繁に編集されるテーブルを分割し、同じレコードをみんなが触らないように業務ルールを作る
- 外部DB(例:SQL Server)
- Access(フロントエンド) + SQL Server(バックエンド)に移行すると、サーバーがロック制御し、競合検出やデッドロック処理が洗練される
5. Write Conflictダイアログが出たらどうする?
Accessで複数ユーザーが同じレコードを変更しようとすると、“Write Conflict” ダイアログが表示される場合があります。選択肢は下記の通りです:
- 保存 (Save Record)
- 他ユーザーの変更を上書きする
- コピー (Copy to Clipboard)
- 自分の更新内容をクリップボードに退避し、再度貼り付けするなど手動で解決
- 破棄 (Drop Changes)
- 自分の変更をあきらめ、他ユーザーの更新を優先する
運用ルールでどちらを優先するかなど、ユーザーに周知しておくと混乱が減ります。
6. 実質的なデッドロックへの対策
- Accessにおけるデッドロックは、厳密には同時に行が互いをロックして待ち続ける状態
- 実際にはAccessが競合検出し、**“Write Conflict”**やエラーコードで中断させることが多く、永遠に待ち続けるシチュエーションは少ない
- 最善策:
- 編集レコードだけロックを徹底し、
- 長時間編集せず(同じレコードをずっと開きっぱなしにしない)、
- 頻繁に保存 (レコード移動)
- もし高度なトランザクション管理が必要ならSQL Serverなど本格的なDBMSへ移行を検討
7. まとめ:ロック設定と運用がデッドロックもどきの発生を防ぐ
- フォームの「レコードロック」プロパティで、「編集レコードのみ」を設定
- 同時編集が多いときはフロントエンド分割やSQL Serverバックエンドを検討
- 長時間の編集モードを避ける
- 1レコードにとらわれたまま他の操作をすると、他ユーザーが待たされる → 無駄な競合やWrite Conflictが発生
- Write Conflictダイアログの周知
- ユーザーがどの選択肢を選ぶかを理解し、上書き or 破棄のルールを明確に
- 安定運用:
- データ設計を見直し、1つのレコードを複数人が同時に触らなくて済むよう業務フローを工夫
Accessで“デッドロック?”と思われる現象が起きる場合でも、ロック設定や使用方法を見直せば多くは緩和できます。もし本当に多数ユーザー・高更新頻度が必要なら、SQL Server連携など次のステップに移行し、安全かつ高速なデータ管理を実現しましょう。
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以上がAccessでのレコードロックやデッドロックもどきへの対応策です。ロックの仕組みを理解し、“編集レコードのみロック”や良好な運用ルールを組み合わせるだけで、トラブルは大幅に減らせます。ぜひ試してみてください。