1. フロントエンド分割とバージョン更新の現状課題
- バックエンド(.accdb/.mdb)にテーブルを集約し、フロントエンド(.accdb/.accde)にフォームやレポート、VBAを格納するのがマルチユーザー運用の定番
- ユーザーごとにフロントエンドファイルをローカルPCへ配置 → ファイル破損やロック競合を防げる
- しかし: 新しい機能やバグ修正でフロントエンドを更新するとき、全ユーザーが自分のPC上のファイルを手動で置き換えるのは面倒かつミスリスクが高い
そこで、自動アップデートの仕組みが求められる。「Auto FE Updater」を用いれば、起動時にバージョンをチェックして最新ファイルをコピーするフローを簡単に実装可能です。
2. Auto FE Updaterとは?
- オープンソースのフリーツール (Tony Toews氏が開発)
- 起動時にサーバー上の“マスターフロントエンド”ファイルとユーザーPC上のローカルファイルのバージョンを比較し、古い場合は自動的に更新してからAccessを起動
- ユーザーはAuto FE Updaterのショートカットをダブルクリックするだけで、常に最新フロントエンドを得られる
- URL: http://www.autofeupdater.com/ (英語サイト)
機能の概要
- Configファイルでどのサーバーパス(例:\Server\Share\YourApp\FE.accde)が最新か設定
- ユーザーPC側でAuto FE Updaterがローカルディレクトリに最新ファイルをコピー
- コマンドラインやショートカットで**/start**等のオプションを付与し、そのままAccessランタイム or フルAccessを起動
3. 基本的な導入手順
- フロントエンド(マスター)をサーバーに配置
- FE.accdbまたはFE.accdeの最新バージョンをネットワーク共有フォルダに置く
- ユーザーは書き込み不要、読み取りだけでもOK(ただし開発者が上書き更新できるようにする)
- Auto FE Updaterダウンロード
- [AutoFEUpdater.exe]などの実行ファイルを入手し、Config.ini等の設定ファイルを作成
- Config.iniで設定
SourcePath=\\Server\Share\YourApp
TargetPath=C:\LocalAccessApp
(ユーザーPC上のフォルダ)
Application=FE.accde
- その他オプション(起動コマンド, ランタイムの指定, etc.)
- ユーザーPCにAutoFEUpdaterのショートカットを配置
- ショートカットを実行すると最新ファイルをチェック→コピー→Access起動のフロー
- 運用
- 開発者が新バージョンFE.accdeをサーバーに上書き → 次回ユーザーが起動すると自動的に更新
4. バージョン管理の仕組み
Auto FE Updaterにはバージョンファイル(Version.txt)やタイムスタンプで更新を検出する機能があります。
- 方法1: 新しいFE.accdeをサーバーにアップし、ファイルの更新日時が異なる → ユーザー側が古いと判断してコピー
- 方法2:
Version.txt
などにバージョン番号を書き込み、更新されたら番号が上がる → Auto FEが番号差異を認識してコピー
結果: ユーザーPCにあるバージョンが古ければ、最新版をダウンロードして起動。ロールバックしたい場合もサーバー上を古いバージョンに戻せば次回起動時にダウングレードされる。
5. 運用のメリットと注意点
5.1 メリット
- 全ユーザーが常に最新を使用
- 不具合修正や機能追加を配布したら、ユーザーが再起動だけですぐ適用
- オペミスの削減
- 手動コピー不要 → 誤配置や古いファイル使用のリスクが激減
- バイナリ衝突回避
- ユーザーはローカルコピーだけ編集動作 → DBを編集するのはバックエンド(共有フォルダ or SQL Server)だから衝突リスクなし
5.2 注意点
- サーバーへのアップロードを正しく行う
- 開発者がバージョン管理をミスすると、ユーザーが間違ったバージョンを取得
- 過去バージョンを保持しておくなど対策
- 起動速度
- ネットワークが遅いと、コピーに時間がかかる → LZMAやZip圧縮などを組み合わせる方法も
- Runtimeのみ環境
- フルAccessなしのユーザーは、Access Runtimeで起動する設定をAuto FE Updater側に記述
- セキュリティや署名
- マクロセキュリティ警告を出さないために信頼済み場所やVBA署名を考慮
6. 大規模チームならGitなどと組み合わせ
- 開発者: Git/Azure DevOpsなどでソース(エクスポートしたVBA)を管理し、ビルド(コンパイル)→.accdeを生成→サーバーアップ
- ユーザー: Auto FE Updaterで都度最新版を取得
- これによりバージョン管理と自動配布の両輪が整い、継続的な改修が効率化
7. まとめ:Auto FE Updaterで快適なAccessフロントエンド配布を実現
- フロントエンド分割するマルチユーザー運用では、最新版配布が常に課題
- Auto FE Updaterを使えば、起動時に自動更新 → ユーザー作業最小化
- バージョン検出方法
- ファイル更新日時 or バージョンファイル/テキスト
- 一度設定すれば、日々の運用は起動するだけ
- 併用
- Access Runtimeの場合でもOK
- GitやCI/CD的フローと組み合わせると、開発→配布の一貫体制が整いやすい
結論: マルチユーザーアクセスアプリのバージョン管理と自動更新を効率化したいなら、Auto FE Updaterを活用する価値は大いにあります。適切に設定ファイルを作り、ユーザーにアップデート専用ショートカットを渡すだけで、常に最新のフロントエンドを安定運用できるようになるでしょう。
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これらの仕組みを整えれば、「古いフロントエンドを使っていた」「改修したのにユーザーが気付かない」といった運用トラブルを大幅に軽減でき、開発者・ユーザーの双方にメリットが生まれます。ぜひ導入を検討してみてください。
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