以下では、「Accessデザインガイドライン:マルチ画面設計・フォームをモジュール化」をテーマに、複数フォームを持つAccessアプリケーションをいかに整理し、保守しやすい形に仕上げるかのポイントを解説します。小さなDBアプリであればフォーム1枚でも何とかなるかもしれませんが、業務が複雑化してマルチ画面(複数フォーム)を使うようになると、UI設計やVBAコードの分割が重要になってきます。ぜひ本記事を参考に、モジュール化による大規模化への対応やメンテナンス性向上を図ってみてください。
1. なぜ複数フォームを設計・モジュール化するのか?
- スケーラビリティ
- フォームひとつに多くの要素を詰め込むと、UIがごちゃごちゃ&VBAコードも管理不能になる
- 画面(フォーム)をテーマ別に分けることで、可読性や操作性が向上
- 役割分担が明確
- 「メインメニュー」「顧客管理フォーム」「商品管理フォーム」「レポート画面」などに切り分けると、目的別に開発・改修がしやすい
- コードの再利用と可読性
- VBAモジュールやクラスモジュールに処理を整理し、複数フォームから共通ロジックを呼び出す
- 重複コードを減らし、メンテを効率化
2. マルチ画面(フォーム)設計の基本方針
2.1 主フォームとサブフォームを活用
- Accessではサブフォームコントロールで親子関係のテーブルを一つの画面にまとめられる
- 例:親フォーム = 顧客情報、サブフォーム = その顧客の注文一覧
- メリット: ユーザーがシームレスに関連データを参照でき、UI体験が良い
- 注意: あまりサブフォームをネストしすぎるとパフォーマンスや可読性に影響
2.2 メインメニュー/ナビゲーションフォーム
- トップレベルフォームを用意して、ボタンクリックで「顧客管理」「商品管理」「レポート出力」など各画面へ移動
- ユーザーが迷わずに機能を切り替えられるUIを構築
- マイクロソフトが提供する「ナビゲーションフォームウィザード」を使うと、メニューを自動生成できる
2.3 1フォーム1目的
- 1つのフォームに過剰な要素(多タブ、複数サブフォーム、ぎっしりコンボボックスなど)を詰め込むと、混雑&管理難
- シンプル設計: 1フォーム=1つの機能・テーマに注力し、共通機能はモジュール化して呼び出す形
3. フォームをモジュール化:コード整理のヒント
3.1 コントロールごとのイベントを乱雑にしない
- フォームの「コード ビハインド」(クラスモジュール)にボタンクリックやBeforeUpdateなどを全部書くと肥大化する
- ロジックは標準モジュールや別のクラスモジュールに移して、フォーム側では呼び出しのみにするイメージ
例:フォームイベントで外部の標準モジュールを呼ぶ
Private Sub btn登録_Click()
Call RegisterCustomer(Me.txt顧客名, Me.txt住所, ...)
End Sub
標準モジュール( ModBusinessLogic ) 例
Public Sub RegisterCustomer(strName As String, strAddr As String, ...)
' ここに実際の登録ロジック
...
End Sub
メリット: フォームイベントはUI部分だけ書き、ビジネスロジックを別モジュールで保持 → 保守性UP、他フォームからも再利用可
3.2 クラスモジュールの利用
- Accessフォーム自体がクラスモジュールとして振る舞う
- より高度な設計では専用のクラスを作成し、フォームからインスタンス化して利用するなども可能
- 大規模化時に複数クラスを分割し、責務(データ処理、外部API連携など)を分担
**4. 共通UIコンポーネントの考え方:使い回しを楽にする】
- サブフォームやポップアップフォームを共通部品として流用
- 例:「検索ダイアログ」「メッセージ表示フォーム」など
- グローバル関数でメッセージボックスやエラー処理を統一
Public Sub ShowError(strMsg As String) MsgBox strMsg, vbExclamation, "エラー" End Sub
- コントロールテンプレート: Accessにはコントロールテンプレート機能が弱いが、似たUI配置ならコピー&貼り付け+命名規則で使い回し
5. メンテナンス性アップのためのベストプラクティス
- 命名規則
- フォーム名:
frm顧客管理
, frm注文入力
- コントロール名:
txt顧客名
, btn保存
, cmb検索条件
- モジュール名:
modCommon
, clsErrorHandler
, etc.
- イベントプロシージャの肥大化を防ぐ
- 長大な
btn登録_Click()
の中で多数のIF文を書くより、サブ関数に切り出し
- グローバル変数の使いすぎに注意
- ログインユーザーIDなど最小限に留める
- 大量の状態をグローバルに置くとバグを誘発
- 画面遷移をメインメニューに集約
- フォーム間のジャンプがバラバラになると混乱。
frmMainMenu
を起点として一貫性のある遷移設計
- コメントとドキュメント
- フォームやモジュールの要件・ロジックをコメントで簡潔に書く
- 他人や未来の自分が読んでも分かるように
6. デバッグやバージョン管理の工夫
- デバッグ
- ブレークポイントやステップ実行でフォームイベントを追う
- 複数フォーム間をまたぐ場合、呼び出しフローを整理しておくと分かりやすい
- バージョン管理
- Accessファイル(.accdb)はバイナリなので差分管理が難しい
- 大規模化ならVBAコードをテキストエクスポートし、Gitなどでバージョン管理
- フロントエンドを頻繁に更新する場合は自動配布バッチやログインスクリプトを用意
7. まとめ:マルチ画面設計×フォームモジュール化で拡張性・保守性UP
- 複数フォーム
- 1フォーム1目的で切り分け
- メインメニュー/ナビゲーションフォームから管理
- サブフォームやモジュールで部品化
- 重複ロジックは標準モジュールやクラスにまとめ、各フォームから呼ぶ
- イベントロジックをフォームにベッタリ書かず、別モジュールに切り出す
- フォームのボタンクリックイベントなどは呼び出しのみ
- 命名・コメント・バージョン管理
こうしたガイドラインを踏まえるだけで、Accessアプリが保守しやすい構成になります。小規模のうちは1フォームに詰め込んでも動きますが、マルチ画面とモジュール化を意識するだけで大規模化しても破綻しないシステムを作ることが可能。ぜひ導入し、よりメンテナンス性とチーム開発に優れたAccessアプリを目指しましょう。
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マルチ画面設計とフォームのモジュール化はAccess開発の奥義とも言えます。うまく活用し、ユーザーフレンドリーなUIと拡張しやすいコード構成を同時に実現してみてください。
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入社した会社では、Accessを活用した基幹システムが長年運用されていました。しかし、開発者の高齢化により保守が困難となり、システムの維持・更新が急務に。
ほぼAccessに触れたことのなかった私は、ゼロから学びながら基幹システムを再構築してみることに。ついにはAccessによるシステム開発エンジニアとしてのスキルを身につけるまでに成長。
元々の業務のノウハウとそれを効率化するためのツール(Access)によって業務効率化システムをいくつも開発してきました。
みなさんの”なにか(業務のノウハウ)”とAccessで業務効率化を実現するお役に立てれば幸いです。
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